帰国便利帳web:2023年8月16日掲載
「やらないことを自発的にやらせる方法」とは?
夏休みもそろそろ終盤。あわてて宿題に取り掛かる子どもが少なくない時期だ。「計画立ててやりなさい」とあれほど言ったのに全くやっていない子どもを見てイライラしてしまう親もいるだろう。「やるべきことをやらない」というのは、多くの親が我が子に対して抱えている不満のようだ。それを示す調査があったので紹介したい。
インターネット調査を行ったのは、『親子の法則 人生の悩みが消える「親捨て」のススメ』の著者・三凛さとし(さんりん・さとし)氏で、小学生から高校生の子どもがいる30歳以上50歳未満の母親・全国1,271人を対象に「子どもの行動」について回答を募った(調査機関:Freeasy/合同会社serendipity 調べ)。子どもの学年の内訳は、「小学校低・中学年」(32.5%)の母親が最も多く、「中学生」(21.0%)の母親、「小学校高学年」(17.1%)の母親、「高校生」(16.6%)の母親の順で多かった。
生活態度について、「小学生から高校生の子どもにあてはまるものはあるか?」と尋ねたところ、「やるべきことをやらない」が52.1%と最も多く、次いで「言うことを聞かない」が36.3%、「態度が悪い」が22.0%、「会話をしない」が5.9%と続いた。「あてはまるものはない」も33.1%いたが、7割弱の母親が子どもの生活態度に難しさを感じていることがわかった。
最多回答の「子どもがやるべきことをやらない」という問題について、ライフコーチで親子関係の心理学に詳しい三凛氏は、その最大の理由は親や学校から「やりなさい」と言われることがその子の”最高価値”と結びついていないからだと言い、以下のように解説する。
人間行動学の世界的権威ジョン・F・ディマティーニ氏は、人にはそれぞれ”価値の序列”(※1)(=人生で大切にしたいこと)があり、そのトップ3~4に入っているものでないと意識も行動もコミットできず、反対にトップ3~4に入っているものだと誰から指図をされなくても勝手に行動してしまうという説を提唱している。
(※1)価値の序列とは、価値の優先順位のこと。人には大きく分けて「精神性」「経済」「仕事」「知識・学習」「娯楽」「家族」「人間関係」「美容・健康」の8つの価値のジャンルがあると言われている。
これを子どもに置き換えると、子どもの場合は、資産形成(経済)や仕事などがない代わりに、はまっているスポーツやゲームなどが序列のトップに入ってくる可能性が高い。例えば、サッカーに夢中な子どもは、学校の勉強とサッカーに関連性が見出せないと、学校の勉強は疎かになってしまう。自分の価値の序列の最高位(3~4位まで)に入っていないことに対してはやる気が落ちたりやりがいが見出せなくなるのは、大人も子どもも同様なのだ。
このような時に親ができることは、一見関連性がないように見える子どもの「やる気が出ること」と「やるべきこと」を関連付けてファシリテート(グループや組織で物事を進めていく時に、その進行を円滑にし、目的を達成できるよう、中立的な立場から働きかける役割を担うこと)することだと三凛氏は言う。
小学生~高校生の子どもを持つ母親の7割弱が子どもの生活態度に難しさを感じていて、中でも多いのは子どもが「やるべきことをやらない」という悩みである。ということが、『親子の法則 人生の悩みが消える「親捨て」のススメ』の著者でライフコーチの三凛さとし(さんりん・さとし)氏の調査により明らかになった。
三凛氏によると、子どもがやるべきことをやらないのは、親や学校から「やりなさい」と言われることがその子の”最高価値”と結びついていないからであり、親ができることとしては、子どもの「やる気が出ること」と「やるべきこと」を関連づけてファシリテートすることだ、というところまで(前編)で紹介した。
では、具体的にどうしたらよいのだろうか。三凛氏が勧めるのは、次のようなワークだ。
子どもに次の13の質問をして、それぞれ答えを3つずつ(ベスト3は何か?)出してもらう。その後、その答えに対して「それは何のためなのか?」を尋る。このような問いかけをすることで、子どもが日々の生活の中で何を大切に思っているかがわかる。
STEP1で子どもにとっての価値の序列がわかったら、「やるべきこと」をすると最高価値にどんなメリットがあるのか、「やるべきこと」をしないと最高価値にどんなデメリット(このワークでのデメリットは、基本的にメリットの反対を示す)がもたらされるのか、それぞれ20個以上書いてみる。
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(例)やるべきこと:部屋の掃除
最高価値:サッカーの試合で勝つ
メリット①:きちんと掃除して整理整頓することで、ユニフォームを探すことに時間を使う必要が なくなる。その分もっと練習できる。
メリット②:きちんと掃除し整理整頓することで、生活環境が整い、集中力が増す。その分、サッカーの試合でも集中力を発揮することができるようになる。
デメリット① :きちんと掃除し整理整頓しないことで、ユニフォームを探すことに時間を浪費することになる。その結果、練習の時間も減る。
デメリット②:きちんと掃除し整理整頓しないことで、生活環境が乱れ、集中力が落ちる。その分、サッカーの試合でも集中力を発揮できなくなる。
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例に挙げたケースの場合は、子どもはサッカーが好きで、サッカーの試合に勝つことに最高価値を見出していることがわかった。この子は、部屋の片づけをしなさいと言ってもやらない。この場合、部屋を整理整頓することでサッカーにもよい影響があること、反対に部屋が片付いていないとサッカーにも良くない影響があることが認識できるようになる。
親子でこのワークを行うと、親は子どものモチベーションの源を理解でき、一方、子どもは「やるべきこと」を自発的にやる確率が上がるようになる。そうなれば、親も毎回ガミガミ言わなくて済むようになる。
やるべきことをやらない、ということでいえば、本誌の読者の中には、帰国直後で子どもが日本の環境になじめずに勉強やスポーツなどにやる気がなくなっている、という悩みを持っている人もいるかもしれない。そのような場合にもこのワークが効果的かどうか、三凛氏に尋ねたところ、以下の回答をいただいた。
「そのような子どもたちにも有効です。ただ、環境になじめないうちは、まずは安心させてあげることも大切ですので、帰国してしばらくはゆっくり過ごさせてあげることも子どもによっては必要かもしれません。新しい環境で落ち着いて、好きなことややりたいこと、大切にしたいことが日本の環境において見出すことができれば、ご紹介したワークはより効果的だと思います」
宿題をしない、練習をしない、部屋を片付けない、など何かしら子どもの生活態度に問題があるときは、子どもにとって良いタイミングで親子一緒にこのワークに取り組み、子どもが自発的に行動できるようサポートするとよいだろう。
(取材・文/中山恵子)
※Yahoo!ニュース、マイナビ子育て等、多数のニュースサイトに掲載されました。