THE GOLD ONLINEに「老後は国をあてにしないでください…。新NISAスタートの裏側に潜む「真のメッセージ」とは?」が掲載:2024年11月1日
大企業に就職すれば安泰という時代は終わり、今では新NISAの創設をはじめ、個々人の資産形成力が国からも求められる時代となりました。本記事では、15万人に「お金の最適解」を教えてきた三凛さとし氏の著書『金のなる本 誰でも再現できる一生お金に困らない方法』(KADOKAWA)より一部を抜粋・再編集して、お金を「もらう」のではなく「つくる」時代の生き方について解説します。
日本では今後も年金をあてにできない状況が続き、退職金制度も縮小していき、人口減少によって内需も労働力も減っていくでしょう。労働力が減っている割には正社員として働ける場所は少なく、非正規雇用ばかりが増えているという現実もあります。その事実に目を背けてはいけません。
そうした中でもお金持ちになる人はいます。年金問題や円安の不安などがつきまとう一方で、現在は投資ブームも巻き起こっています。その発端となったのは、2024年1月、少額投資非課税制度・NISA(ニーサ)の非課税枠が拡充されたことでした。
通常であれば、投資で得た売却益や配当などの利益には所得税15.315%(2037年までの復興特別所得税含む)、住民税5%の合計20.315%が課せられます。例えば、株式投資などで100万円の利益があったとしても、税金20万3,150円が引かれるので、手取りは79万6,850円になってしまうのです。
ところが、NISA口座で売買した金融商品に関しては非課税になるため、100万円の利益から税金が引かれることなく、丸ごと100万円を手にできるというわけです。
大変ありがたい制度ではあるのですが、どうして政府は今このような制度を創設したのでしょうか。「そうでもしなければならない切実な理由があったから」と考えるのが妥当でしょう。
つまり、「年金財政の悪化や人口減少等の影響で国はこれまでのように、国民の老後の面倒を見ることは難しくなった。その代わりに有利な資産形成のしくみを作ってあげるから、各自で老後資金作りの努力をしなさい」ということです。
組織に属していれば安泰だった日本。それこそ昔から続く伝統で、圧倒的多数を占めた農民は村落共同体というコミュニティで相互に助け合う「相互扶助」が一般的でした。また、武家社会では殿様に忠義を尽くすことで一生面倒を見てもらうことができました。そして戦後、多くの会社ができて勤め人が増えてからは、会社と国が守ってくれていました。
しかし、そんな「日本人として一般的な生き方」が、今できなくなりつつあります。お金は会社や国から「もらうもの」ではなく、自分の手で「作り出すもの」と認識を改めなければならないタイミングが、まさに今なのです。
ちなみに私は、今までの日本が過保護すぎたのではないかと感じています。国に余裕があるうちはそれでも問題化することはありませんでした。でも、もう国にそこまでの余裕がなくなってしまいました。1990年代初頭のバブル経済崩壊後、「失われた30年」と言われる底なしの不況に入りました。
この間、日本経済の主要な経済指標である「日経平均株価」は著しく下落。ようやくバブル経済前の最高値を超えるには2024年まで待たねばなりませんでした。
ほかの国ではこの30年の間にぐんぐんと経済成長を果たしていったというのに、日本だけが不況からの回復が遅れてしまったのです。それが「老後は国をあてにしないで」というメッセージの要因だと思います。
今すべきことは、これまでのお金に関する意識を変えていくことです。
大企業に就職すれば安泰の時代は終わりました。とはいえ、逆に現代では頭を使って時流をうまくつかみ、自分の特技と結びつけることによって一発逆転することも可能になっています。誰もがインターネットを通じて世界中に自由に発信することができる時代なのですから。むしろ、そうした生き方をしていったほうが、これからますます厳しくなっていく時代を乗り切っていける可能性は高いと言えます。
まずは意識を変えるためのきっかけをつかみましょう。
三凛 さとし