弊社がスポンサーを務める人工衛星「ISHIKI」の打上げ結果についての記事がForbes JAPANに掲載されました。:2024年12月14日掲載
自ら設定したミッションの下、人工衛星を作りあげた広尾学園高等学校の生徒たち。(左から)前田昊生、澤村太智、新垣蓮、矢尾海心、藤村ひな乃、青木莉緒(モニターに映る平松彪悟、木本晃一の2名は米国からZoomでリモート参加)、中央はラグラポCEO高野宗之。Forbes JAPAN編集部にて
このロケットにはなんと、「高校生たちが企画、製作した」人工衛星「ISHIKI」が搭載されていた。
この試みには「LAGRAPO」が深く関わっている。同社は、三菱重工でのH-IIAロケット設計、JAXAでの⽇本初の宇宙船「国際宇宙ステーション補給機「こうのとり」(HTV)」の開発を⾏った経験を持つ代表の高野宗之氏を中心に、宇宙開発の管理手法をベースとした企業向け経営コンサルティングのほか、広く宇宙事業の普及に向けた活動を行う。同社は宇宙事業を多くの一般企業に普及させるためのコンテンツとして、同時に実際の宇宙開発を多くの次世代の子ども達に経験してもらう教育に資する新たな取り組みとして、「LAGRAPO人工衛星プロジェクト」を開始した。
そして同社が仕掛ける「LAGRAPO人工衛星プロジェクト」の第一弾が、ほかでもなく、都内・広尾学園の高校生が製作した人工衛星「ISHIKI」の打ち上げだ。
このプロジェクトは、教育キットで衛星製作の一部を生徒たちが担うような、よくある教育事業ではない。大人は相談役に徹し、ミッションの企画・製作・試験から打ち上げまで、企業が行う宇宙事業と同じスペックを生徒たちだけで考え進めていくデザインだ。
さらにこのプロジェクトには、LAGRAPOの他、宇宙開発技術や工場を持つオービタルエンジニアリングなど、実際の宇宙開発同様に多くの大人たちが脇を固める。serendipity代表三凛さとし氏も宇宙、教育分野の発展のために支援を申し出た。
人工衛星でどのようなミッションを果たすのか。生徒たちが自ら考えたのは、人工衛星に取り付けたLEDライトを地上から観測することと宇宙における構造物の展開、メッセージの送信だ。
失敗を乗り越えながらプロジェクトを進めてきたこの1年を振り返ってもらった。
広尾学園の高校生が製作した人工衛星「ISHIKI」
【人工衛星「ISHIKI」プロジェクトメンバー(広尾学園高等学校)】
矢尾 海心(高3、インターナショナルコース)
新垣 蓮(高3、インターナショナルコース)
澤村 太智(高3、インターナショナルコース)
青木 莉緒(高2、医進・サイエンスコース)
藤村 ひな乃(高2、医進・サイエンスコース)
前田 昊生(高2、インターナショナルコース)
平松 彪悟(卒業生、UCLA、米国からZoom画面で参加)
木本 晃一(卒業生、スタンフォード大学、同)
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髙野宗之(ラグラポCEO)
平松彪悟:僕と晃一(木本晃一)が「株式会社うちゅう」で学生インターンをしていたことが全ての始まりです。
「うちゅう」では、モデルロケットのリカバリーワーディング(※モデルロケットを打ち上げる際にエンジンの上にセットする不燃紙で、パラシュートがエンジンの熱で溶けないようにするためのもの)の日本製製品を作るプロジェクトに参加して開発を手伝っていました。
ある日、LAGRAPOにも参画している「うちゅう」取締役の八島京平さんから、「うちゅう」の学生用Slackのグループチャットで「一緒に衛星をつくりたい人はいませんか?」という問いかけがあったんです。
最初は、本当にそんなことができるのかなという不安がありましたが、こういう貴重なプロジェクトに参加するのはすごく意味のあることだと思って、晃一と一緒に「ぜひやりたいです!」と返事をしたんです。
木本晃一氏(画面下左)、平松彪悟氏は米国からそれぞれZoom参加してくれた
木本晃一:それで僕と彪悟は参加が確定して、他の広尾学園のプロジェクトメンバーは、広尾学園の植松教頭先生など、先生方に選んでもらいました。
平松彪悟:メンバーを選んでもらうために、晃一と一緒にプロジェクトの資料を作って植松先生にピッチするためのプレゼンをしたよね。それもいい思い出です。
矢尾海心:我々の衛星「ISHIKI」の打ち上げが行われる和歌山県串本町の発射場「スペースポート紀伊」の見学に行きました。実際に見て、ここから打ちあがるんだという実感もあったと思うんですけど、どうでしょう?
澤村太智:僕はスペースワンという会社を知らなかったんですけど、新しい民間企業がコンパクトなシステムで新型の中小型ロケットを打ち上げるというのはすごく画期的だなと感心して。技術的なところにすごく興味を持ちました。
藤村ひな乃:ロケットってあまり知らなかったんですけど、実際に行ってみたら、大きな敷地にポツンと指令室があって。その指令室がカッコよくて感動しました。
高野宗之(ラグラボCEO): 僕がすごく印象的だったのは、打ち上げ場への移動の車の中で、全員が英語で会話していたこと。
あれ?おかしいな、日本の高校生を乗せているはずなのになって。広尾学園の生徒のレベルの高さをすごく感じました。
矢尾海心:衛星に光通信がついていて、軌道上でLEDを光らせて地上から観測するというミッションがあるんです。
それで、LEDの数や配置の仕方を決めるテストをしました。大気中で20キロくらい先の光が見えれば、宇宙からでも見えるだろうという考え方で、20キロ先のLEDの試験球をカメラの望遠レンズを使って拾うという試験を、忘れたいぐらい何回もやったよね。
前田昊生:最初は彪悟と晃一と俺の3人で長者ヶ崎に行って。
矢尾海心:それから場所を選んで、3人(前田・藤村・青木)は何をしたんだっけ?
青木莉緒:20キロ離れた方に向かってひたすら角度を変えながら、電話で「見えますか?」「あ、見えます!」って確認しながら(笑)。やっているうちに日が暮れて、海だから真っ暗ですごく寒かった。
矢尾海心:僕と太智は、江ノ島のカメラ側にいたんですけど、こっち側からは、海に光が反射して二重に見えて。だから長者ヶ崎はあんまりよくなかったよね。
澤村太智:カメラを構えてカップラーメンを食いながら…。
矢尾海心:僕がガスバーナーをもって行って、お湯を沸かしてカップラーメンを作って。
澤村太智:半分キャンプみたいな感じ。
矢尾海心:それでなんとか見えたので、もう少し遠い海から離れたところでやりたいねということで、木本と平松に城ヶ島に行ってもらって。
木本晃一:城ヶ島は本当に大変でした。最初は江ノ島からLEDが見える角度を探すために夜城ヶ島に行ったんです。海の岩の上に立ってLEDを放ったけど、全く見えなくて。
次は内陸の高台の方に行ったんです。藪の中を歩き回ってやっと江ノ島が見えるところを見つけて。無理やりスイッチのボタンをオンにしたりオフにしたりしながら、「見えた?」「見えない?」と電話で確認しながらやったんです。
矢尾海心:僕がLEDの試験機をデザインしたんです。衛星の一部を模した感じのモジュールにLEDをつけてテストしていたんですけど、それが持ちづらいという苦情が来たので、三脚に取り付けられるようにしたんです。その後も蓮と一緒に行ったよね?
新垣蓮:行ったね。3月の夜の海は死ぬほど寒かった。
矢尾海心:海風がヤバくて。カップラーメンとコーヒーと紅茶を入れまくって寒さをしのいだよね。
蓮と行った後、広尾学園のスミス先生にも来ていただいて。先生の望遠鏡に一眼レフをつけて観測したし、うちゅうの矢島さんにも来てもらった。
一度僕がカメラの雲台を忘れてしまって、三脚の上に直接望遠レンズを置いて、八島さんに手で固定してもらって写真を撮るという、めちゃくちゃ危ないことをしたことがありました。
衛星の動きが線状に写るように長時間露光で撮影しようということになって。車の上にLEDを付けて走らせて撮影する実験もしましたが、その試験機を作るのも大変でした。
新垣蓮:2日かけてLEDを点滅させるコードを書いてマイクロコンピュータとLEDの配線を繋いだよね。学校で始めて、僕の家に持って帰って、最後は僕が海心の家に泊りに行って作業して、やっと仕上がったという感じだった。
矢尾海心:結局寝ずにやって、そのまま僕は試験をしに山梨に。
新垣蓮:で、僕は学校に (笑)。
矢尾海心:スミス先生に20キロ先に行ってもらって、ピカピカ光っている写真を望遠鏡で撮ってもらって。それでうまくいって、実証試験は全部終了しました。
高野CEO:LEDの角度調節も大変だったよね。
矢尾海心:衛星は立方体で、側面と下の面にLEDがついているんです。
当然ですが、地球の方向にLEDが向いている時だけ見えるんですけど、衛星は回転しているので必ずしも地球の方向を向いているわけではないんです。
だから、地球に対してどの角度でLEDをつければ見えるのかテストが必要でした。
高野CEO:まだわかっていない時、全面にLEDをぎっしりつけていたよね。
矢尾海心:そうなんです。4面全部つけるのか、六角形の円柱みたいにするのかとか、いろいろテストをして。めちゃくちゃ大変だった。
一番少なくてすむ条件を探したら、結局2面ついていれば見えるという結論になりました。
まあ、いろいろトラブルもあったけれど、最終的には満足のいく試験ができました。
澤村太智:LEDを光らせて観測するにしても、東京周辺の上空をいつ通るかわかりません。
そこで、3D計算上で、地球があって衛星がどこを飛ぶか、おおよその軌道をゲームエンジンで再現したんです。
矢尾海心:言語は何だっけ?
澤村太智:「Unity(ユニティ)」というゲームエンジンで、言語はC♯(シーシャープ)です。
高野CEO:太智が作ってくれたやつはすごかったよね。見てびっくりした。地球がくるくる回って、そこに人工衛星の軌道があって。
あれで今回のLED試験で点滅をどうやるかコントロールできる。あれは最終的にホームページとかで公開してみんなに見てもらうことになると思う。いろんな人がこれからはあれを見て、やってみるんじゃないかな。
※LAGRAPOと広尾学園の高校生が製作した人工衛星「ISHIKI」は、2024年12月14日、スペースワンの「カイロスロケット2号機」で宇宙へ打ち上げられる。
※完成した人工衛星「ISHIKI」には、生徒からの2つの言葉が載せられている。
「Dare Mighty Things.」(あえて壮大なことを)
「Let’s make it to space this time.」(今度こそ宇宙へ)
(広尾学園高校の人工衛星製作。OBはスタンフォード大学へ に続く)