サライ.jp:2023年6月24日掲載
【義家族との間】「夫の顔が苦痛で歪んだ」子作りに失敗したレス夫婦がそれでも離婚しない理由
家族の中には、血縁のない『義(理の)家族』という間柄がある。結婚相手の親族関係を指すことが一般的だが、離婚件数が増える現在では、親の再婚相手や、再婚相手の連れ子など、家族の関係は複雑化している。血のつながりがないからこそ生じる問題、そして新たに生まれるものも存在する。義家族との関係を実際に持つようになった当事者にインタビューして、そのときに感じた率直な思いを語ってもらう。
セックスレス夫婦のドラマが話題になっている。合同会社serendipityでは、25歳以上30歳未満の既婚男女全国1,000人を対象に「セックスレス(※)と未成年期の両親の仲の関連性」について調査を実施(実施日:2023年5月18日、サンプル数:1,000人(男女各500人)、インターネット調査)。20代後半の35.5%はセックスレスであり、セックスレス既婚者の36.9%が「1年以上セックスしていない」という結果になった。
(※)日本性科学会では、セックスレスとは夫婦やカップルにおいて「特別な事情がないにもかかわらず、性交あるいはセクシュアル・コンタクトが1か月以上ない」ことを指す
今回お話を伺った恵理子さん(仮名・39歳)は大学のときから付き合っている男性と27歳のときに結婚。付き合っているときからレス状態に入り、結婚後は一時的に、子どもを作る手段としてだけ夫婦生活があったという。
恵理子さんは岡山県出身で、両親と5歳下に弟のいる4人家族。家族の中で一番優しいのが父親だった。小さい頃から上手に寝ることができなかった恵理子さんは父親と夜更かしするのが大好きだったと振り返る。
「居間にいるときには眠たくなるのに、いざ布団に入ると目が覚めてしまって。暗い部屋で一人にさせられるのが嫌でいつもぐずるような子でした。そんなときに側にいてくれたのが父親です。父親は建築関係の仕事をしていたんですけど、家には帰って来るのはいつも早くて、私を寝かすのが父、弟を寝かすのが母という感じでした。
父は怒ったところを見たことがないくらい温厚で、私はもちろん、弟や母にも優しかったです。よく田舎で力仕事をしている男性って頑固おやじというイメージがありますが、私の父親は真逆の人でした」
そんな優しい父親は、恵理子さんが大学生のときに病気が判明して入退院を繰り返すようになり、恵理子さんが28歳のときに亡くなってしまう。結婚を27歳にしたのは父親のことがあったからだという。
「夫は大学の同級生で、私はいつ結婚してもいいと思っていましたが、夫は27歳の結婚はまだ早いという考え方でした。だから、結婚は私からの逆プロポーズでしたね。夫は父親の状況も知っていたので、頷いてくれました。
あのとき、もちろん夫だから結婚したいという思いもありましたが、いち早く父親に安心してもらうため、とにかく結婚がしたいという気持ちもありました。夫とは、当時はそこまでうまくいっていた関係ではなかったんです」
恵理子さんは大学のときに上阪。夫とは1年以上の友人期間を経て、恋愛関係になった。夫は実家から通っていて、付き合った当初は恵理子さんの家に入り浸っていたという。もちろん、レスではなかった。
「大学に近い1Kの狭い部屋だったので、体のどこかが触れ合っていました。お金もないから、いつも家にいましたね。何もすることがないから、自然とそういう時間も増えたというか。
夫は大学時代はどちらかというとモテるタイプの人で、異性の友人も多かった。彼女とあまり長く続いたことがないと友人の期間に聞いていたので、私ともそこまで長く続かないんだろうなって思っていました。付き合って1年ぐらいで会話もないような危機もありましたし」
そんな危機を救ったのが、遠距離。就職活動の最中で父親の病気が発覚して、恵理子さんは地元で就職することを決意する。その決意を相手も応援してくれ、そこから仲が深まっていった。
「遠距離になることがわかってから、残りの大学生活を少しでも一緒にいようとなって、2人の時間を大切にするようになったんです。お互いに就職先が決まった後には色んなところに旅行も行きました。お金がないから夫の実家の車で車中泊するような旅もありましたね。夫の両親とも挨拶をして仲良くなっていったのはこの頃。車を借りたり、旅費を出してもらったり、一緒に食事をしたり。義両親はどこか父親に似ている、温厚な人たちという印象でした」
遠距離になる前は付き合った当初のような気持ちが戻っていたという。しかし、性関係については旅行先であるかどうかという状況に。「あの頃から非日常のシチュエーションがないと不可能になっていた」と振り返る。そんな2人が夫婦になった後、夫婦生活は子どもを作るための手段となってしまった。
家族の中には、血縁のない『義(理の)家族』という間柄がある。結婚相手の親族関係を指すことが一般的だが、離婚件数が増える現在では、親の再婚相手や、再婚相手の連れ子など、家族の関係は複雑化している。血のつながりがないからこそ生じる問題、そして新たに生まれるものも存在する。義家族との関係を実際に持つようになった当事者にインタビューして、そのときに感じた率直な思いを語ってもらう。
セックスレス夫婦のドラマが話題になっている。合同会社serendipityでは、25歳以上30歳未満の既婚男女全国1,000人を対象に「セックスレス(※)と未成年期の両親の仲の関連性」について調査を実施(実施日:2023年5月18日、サンプル数:1,000人(男女各500人)、インターネット調査)。20代後半の35.5%はセックスレスであり、セックスレス既婚者の36.9%が「1年以上セックスしていない」という結果になった。
遠距離期間は約4年。お互いにお金に余裕はできたものの、時間の余裕が大幅に減ったことで会えるのは2か月に一度ほど。遠距離の間、行為があったのは5回ほどだった。
「スケジュール帳に数えてしまっていました(苦笑)。久しぶりに会っても一定の距離を置いて、話をするだけ。お互い実家だったので遠距離中に泊まるのはホテルだったのですが、ツインルームだったときにはもうするつもりもないんだなって思いましたね。
4年もあると、会うのが義務みたいになってくるんです。『今月(会えるのは)はこの週かな』と事務的なメールが入って、それに返信するだけ。『早く会いたい』などの言葉なんて、半年ほどしかなかったんじゃないかな」
それでも、別れずに2人は結婚。結婚してから父親が亡くなるまでは恵理子さんは2拠点の生活を続けた。恵理子さんが岡山の実家で過ごす期間には、ショックなことがあったという。
「父親は結婚して半年ほどで亡くなりました。その間、夫の許可も得て、定期的に実家に帰っていました。岡山の仕事は結婚を機に退職していたのですが、どうしても父親の側にいたかったので。
一度、実家に滞在する予定を1日早めて大阪の家に帰ったことがあったのですが、そのときに……、ゴミ箱にある大量のティッシュを見つけてしまって。小さな袋にまとめられていました。私がいるのに、自分でしているんだって思いましたね。もしかしたらもう性的な気持ちがないのかなって思っていたので、その気持ちはあるのに対象が私じゃないんだってわかって、ショックでした……」
結婚して3年経っても夫婦生活は一度もなし。義母からさりげなく孫について聞かれる機会も増え、そのことをメインに、夫婦の話し合いの機会を持ったという。
「表向きには、子どもについての話し合いです。レスについては面と向かって話す勇気がなかったので、義母の催促もあるし、私も30歳を超えていて子どもが欲しいという話をしました。そしたら、夫から『いつかは欲しいと思っていた』と遠い未来の話みたいな言い方をされて、イラっとしましたね。お互い30歳でタイミングは今ということを伝えて、そこから月に期間を決めて夫婦生活を持つことを決めました」
タイミングは妊娠しやすい期間に毎日が望ましいことも理解していたが、1日置きの2回と回数も決めて行なった。最初こそ夫は何も言わずに協力してくれていたが、4度目のタイミングあたりから「減らしてほしい」と訴えるようになり、7度目には「(行為は)愛情を感じられるものではなくなった」と恵理子さんはいう。
「最初のほうはまだ愛情を感じられるものでした。でも、『減らしてほしい』と言われてから、時々夫の顔が歪むのを感じていました。苦痛なんだろうなって。後半になると、本当に妊娠するための手段となっていました。
その行為を3年ほど続けたのですが、妊娠せずに私から『夫婦だけで楽しく生きていけたらいいね』と伝えて、終わりました」
今も夫婦は、表面上は仲良く暮らしている。数年前に引っ越しをして、そのときに2人の寝室を別々にしたという。恵美子さんに離婚の意志はない。その理由について「レスで別れるのって、結局は他に別の異性を求めているということですよね。今相手がいないにしても、将来的にはそれを望んでいるということ。私たち夫婦にはそれがないんだと思います。女性として見られたいという願望が、この安定した生活をなくしたくない思いより強くなることはないです」
冒頭のアンケート調査では、「配偶者とのセックスレスを悩んでいるか?」の問いに、「悩んでいる」のは男性47.3%、女性51.5%となり、「悩んでいない」と回答したのは男性52.7%、女性48.5%となった。20代の夫婦でもおおよそ半分の夫婦は悩んでいないのである。セックスレスは離婚事由になるが、離婚しないことを選択した夫婦も多い。セックスレス夫婦の数は想像よりもずっと多いことが予想される。
取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。
※Yahoo!ニュース、マイナビ子育て等、多数のニュースサイトに掲載されました。